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商工にっぽん 2008年12月号
特集2 いま範としたい時代創造リーダーは P40-43
〜 神戸大学大学院経営学研究科教授 金井壽宏 〜
「変革」が叫ばれる時こそ原理原則を守り抜くリーダーシップが重みを増す――白洲次郎
白洲次郎――第二次世界大戦後、敗戦国である日本の地位向上のために、GHQとタフな折衝を繰り返した人物である。
どんな屈辱的な状況に陥っても独立自尊の精神を守り抜き、どんな相手に対しても毅然とした態度をとり続けた。
その原理原則を貫く姿勢こそが、現代のリーダーたちに求められるものだと金井壽宏教授はいう。
原理原則を守るリーダーシップが重要性を増している
いまの時代を象徴するキーワードが「変化」だというのは、誰もが認めるところだろう。
1978年に経済学者・ジョン・ガルブレイスのベストセラー『不確実性の時代』が出版されたころから、
組織や個人の「変化対応」が叫ばれてきた。
絶えず変化する不確実な環境に適応するためには、自らもそれに合わせて変化しなければならないということである。
(中略)
しかし、長く「変革」が叫ばれる中、「変革」によって社会が一向に改善されないのを目の当たりにしてきた人々は、
「変える」ことよりももっと大事なことに気付き始めている。それは、「何を守るか」ということだ。
「変革」の名のもとにあらゆるものを切り捨てる“変革型リーダー”の軽薄さに気付いた人々が、
「あなたは何を守るために変革をするのか」ということを指導者や経営者に問う時代になりつつあるのである。
(中略)
いまのリーダーに求められているのは、まさにこの「変えることのできないものを受けいれる冷静さ」と
「変えることのできるものと、変えることのできないものとを、識別する知恵」に他ならない。
「変えることができないもの」というのは、たとえば企業にとっては存在意義となるコアの部分であり、原理原則である。
しかし、経営者の中には、周囲からの「変革」の要求に屈して、そうした原理原則までを見失い、会社をつぶしてしまう人が少なくない。
企業が傾けば、経営者が変革を要求されるのは当然のことだが、
株主などは以前の経営を悪とまで考え、根本から否定しようとしてくる。
だから、リーダーは、よほどの強い意志と説得力がなければ、原理原則を「守る」ことができないのである。
白洲次郎に学ぶべき独立自尊の精神
そのような観点で、世のリーダーの方々に参考にしていただきたい人物が白洲次郎である。
彼は第二次大戦後、敗戦国である日本の地位向上のため、GHQとの間で様々な折衝を繰り返したことで知られている。
まさに、日本という国が国際社会からその存在の全てを否定される中で、国家としての尊厳を守るために戦ったリーダーなのである。
白洲次郎の戦いの伝説は、枚挙に暇がない。
(中略)
これ以上はあえて割愛させていただくが、なぜほとんどの政治家や官僚が占領軍の言いなりになる中で、
白洲次郎だけが国家の将来を案じ、強気な態度でGHQに働きかけをすることができたのか。
それは白洲次郎の言葉に表れている。
「プリンシプルを持って生きていれば、人生に迷うことは無い。
プリンシプルに沿って突き進んでいけばいいからだ。そこには後悔もないだろう」
プリンシプルとは、まさに原理原則を意味する言葉である。
(中略)
白洲はプリンシプルを守るため、どんな不利な勝負でも、劣勢になっても戦い通した。
性格は直線的だったが、思い通りにならないからといって仕事を放り出すようなことはなかった。
憲法改正の際も、GHQと日本側の首脳との間で板挟みになりながらタフな交渉をこなし、
結局は日本側の意向はほとんど採用されなかったものの、
どんな絶望的な状況に陥っても、どんな屈辱的な言葉を突きつけられても、
自分たちの思いを実現すべく、最後の最後まで可能性を模索し続けた。
リーダーたる者、仕事を途中で投げ出したりすることは許されない。まさにそれを体現したのが白洲次郎だった。
だからこそ、醸し出す雰囲気で人を魅了し続けることができたのである。
2010年3月まではweb上で公開されていた記事でした。
これまで外部リンクとしていましたが、貴重な資料であると思われたため、今回参考文献の一つに加えさせて頂くことにしました。(2010年4月12日)
商工にっぽん
http://www.sho-ko.co.jp/
仮にも、白州次郎氏に原則を伝えようとするものなら、「すでに知っている。」と回答するかもしれませんね。
もっとも、今回発見したのは原則そのものの存在であるということです。
正確に言えば、彼は原則発見者ではなく、原則に従っていた人であると言えるでしょう。
参考文献 |
その1:トップ自らが範を示せ。経営の原則は業種を超えて同じだ。
その2:会社をつぶす社長は80%の”原理原則”を知らない。★★★
その3:原理原則に則って物事の本質を追究して、人間として何が正しいかで判断する★★
その6:原則は自明的な自然の法則といえます。★★★★★